「つみたてNISAで新興国株は不要なの?必要なの?」「投資するなら先進国と新興国、どっちがいいの?」そんな疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
新興国株のインデックスファンドは、2000年代初頭に絶好調だったBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)や、南アフリカ、台湾、サウジアラビア、タイ、メキシコ等、成長著しい新興国を投資対象にしてします。
結論から言うと、新興国株は不要ではありません。先進国株のインデックスファンドと組み合わせて保有するか、全世界株の一部として保有するかはお好みになりますが、ポートフォリオに少し入れた方がいいです。
先進国に比べてリスクは高いですが、まだ経済的な成熟度が低く、現在の株価水準も低いため、今後、予測されている通りの経済成長が実現した場合は、大きなリターンが期待できます。
広大な国土と豊富な資源を有し、日本などの先進国とは違って労働世代の人口増加が予測されている新興国は、先進国を上回る大きな成長の可能性を秘めています。
新興国株はハイリスク・ハイリターンな暴れ馬ですので、保有割合を増やすのは危険ですが、大化け期待投資枠として、全体の10%前後を目安にポートフォリオに組み入れることをおすすめします。
この記事では、新興国株インデックスファンドの
- ベンチマークにしている指数の違い
- メリット・デメリット
- つみたてNISAで購入できる銘柄比較
- おすすめの銘柄
- 適切な投資方法
をご紹介します。この記事を読めば、新興国株のインデックスファンドで何を選べばいいのか、判断できるようになりますよ。
新興国株の株式指数
新興国株インデックスファンドが連動を目指している指数は、下記の3種類です。
指数名 | MSCIエマージング・マーケット・インデックス | FTSEエマージング インデックス | FTSE RAFIエマージングインデックス |
---|---|---|---|
開発社 | MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)社 | FTSE(フッツィー)インターナショナル社 | FTSE Russell社 |
構成国数 | 26カ国 | 24か国 | 13か国 |
構成銘柄 | 大型株・中型株 | 大型株・中型株 | 大型株 |
構成銘柄数 | 約1,400銘柄 | 約1,900銘柄 | 約400銘柄 |
特徴 |
・ほとんどのインデックスファンドがベンチマークにしている。 ・韓国が含まれる。 |
・韓国は含まれない。 |
・大型株のみが対象。 ・国数が少ない。 ・韓国は含まれない。 |
※2022年1月現在
♦MSCIエマージング・マーケット・インデックス
世界的な指数算出会社であるモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社が算出している、代表的な新興国の時価総額加重平均型株価指数です。ほとんどの新興国株ファンドがベンチマーク(運用目標の基準)にしています。中国と台湾の上位2カ国だけで約50%を占めています。
♦FTSEエマージングインデックス
フッツィーインターナショナル社が提供している、時価総額加重平均型の株式指数です。新興国24か国の大型株と中型株で構成されていて、中国と台湾の上位2カ国だけで約55%を占めています。韓国が含まれていないのが特徴です。
構成銘柄は約1,900銘柄で、新興国株式時価総額の約90%以上をカバー。つみたてNISA対象銘柄では「SBI・新興国株式インデックス・ファンド」だけがベンチマークにしています。
♦FTSE RAFIエマージングインデックス
FTSEエマージングインデックスのうち、流動性、時価総額、浮動株について基準を満たした上場株式の中から、株主資本、売上、キャッシュフロー、配当といったファンダメンタルズで選別された大型株400銘柄で構成されています。
構成国数は13カ国で、中国、台湾の上位2国で約45%を占めています。こちらも韓国は含まれません。つみたてNISA対象銘柄では「iFree新興国株式インデックス」だけがベンチマークにしています。
構成国と比率
MSCIエマージングインデックス | FTSEエマージングインデックス | FTSE RAFIエマージングインデックス | |||
中国 | 34.02% | 中国 | 37.21% | 中国 | 29.38% |
---|---|---|---|---|---|
台湾 | 15.64% | 台湾 | 17.91% | 台湾 | 15.85% |
韓国 | 12.18% | インド | 15.03% | ブラジル | 14.33% |
インド | 12.09% | ブラジル | 5.15% | インド | 11.77% |
ブラジル | 4.05% | 南アフリカ | 3.82% | ロシア | 10.99% |
その他 | 22.01% | サウジアラビア | 3.69% | タイ | 4.22% |
ロシア | 3.52% | 南アフリカ | 4.03% | ||
タイ | 2.22% | サウジアラビア | 2.32% | ||
メキシコ | 2.18% | メキシコ | 2.76% | ||
マレーシア | 1.82% | マレーシア | 0.60% | ||
その他 | 7.45% | その他 | 3.75% |
※2021年11月末時点
リターン比較
上記は、各指数に連動するETFの、直近10年間の騰落率を比較したグラフです。「MSCI」と「FTSE」はほとんど同じですが、「FTSE RAFI」だけが大きく劣後していますね。
そして、直近10年間は、どの指数も伸び悩んでおり、かろうじて「MSCI」と「FTSE」はプラス圏に浮上してきましたが、「FTSE RAFI」は10年前の価額を上回ることができていません。
新興国株のメリット
- 20カ国以上に分散投資できる
- 堅実な成長が期待できる
- 株価の伸びしろが大きい
- 先進国に比べてPERが低くて割安
- どの国が急成長してもカバーできる
20カ国以上に分散投資できる
約50カ国に投資できる「全世界株」よりは当然少ないですが、新興国株も約25カ国をカバーできますので、分散性が高いのがメリットです。
アメリカだけ、日本だけといった1国だけに投資するのとは違い、世界中の国と地域に幅広く分散投資することができ、集中投資のリスクを低減できます。
中長期的に大きな成長が期待できる
新興国株の最大のメリットは、大きな成長が期待できる点です。例えば我が日本のように高度成長期が終わり、経済的に成熟してしまった先進国は、AIや半導体など、IT系分野での成長は見込めるものの、人口減少・少子高齢化による労働生産性低下など課題が多く、経済成長は鈍化することが見込まれています。
上記は2050年までのGDP成長率を比較したグラフです。先進国に比べて、新興国の予測成長率が非常に高いことが分かります。
新興国は、広大な国土があり、豊富な天然資源に恵まれていて、インフラ整備の余地と規模が大きいばかりでなく、中長期的に人口増加が続くと予測されている国が多いので、労働生産性向上による高度成長が期待できます。
株価の伸びしろが大きい
※2012年1月~2022年1月
※各クラスの指数または指数に連動するETFで比較
上記は直近10年間の各資産クラスの騰落率を比較したグラフです。新興国株はダントツの最下位で、マイナス圏に停滞している時期が長く、ずっと横ばいが続いています。
実は1988年~1998年と2001年~2010年は、米国株をも上回るリターンを叩き出していました。下記は、直近約20年(2003年4月~2022年1月)のアメリカと新興国の株価騰落率を比較したグラフです。
※アメリカはS&P500、新興国はMSCIエマージングインデックスに連動するETFの騰落率。
2011年頃までは、リーマンショック後の大暴落があったものの、アメリカを大きく凌駕するパフォーマンスでした。しかし、2012年以降は伸び悩んでいることが分かります。
実は2008年から現在まで、新興国の経済成長率は先進国を上回っていたにも関わらず、株価はずっと横ばいで、先進国のような上昇カーブを描くことができていません。その一因は、先進国の中央銀行による異次元の金融緩和策です。
リーマンショック以降の不況に対応するため、世界各国で大規模な金融緩和政策が実施されてきました。震源地であったアメリカを中心に、日本はもちろん、欧米の先進国でも軒並み大規模な金融緩和が実施され、金利引き下げや、FRBや日銀等、中央銀行による資産買い入れによって、断続的に財政出動が行われてきたのです。
更に、2020年のコロナショック以降、先進国では更に大規模な金融緩和政策が実施されてきました。新興国も同様に金融緩和をおこなっていますが、先進国に比べると小規模な内容です。つまり、先進国に比べて新興国の方が、株価を押し上げる効果が弱かったということです。
2022年以降はテーパリング(量的金融緩和政策を段階的に縮小すること)で、金融緩和は終了しますので、先進国の株価押し上げ効果はなくなります。一方で新興国株は直近の10年以上低迷を続けていた分、今後の経済成長が予測通り進めば、株価の大きな上昇が期待できます。
先進国に比べてPERが低くて割安
2020年3月のコロナショック後、株価が急回復したことによって、アメリカや先進国株のPER(株価収益率=株価の妥当性を図る指標)は、2021年末の時点で非常に割高な領域に達しています。金融緩和策によってダブついた資金が市場に流れ込み、本来の企業価値以上に株価が上昇してしまっているということです。
適正なPERは15~20倍と言われていて、数字が大きくなるほど割高ということになりますので、アメリカと先進国株はかなり割高な状態にあることが分かります。それに比べると新興国株は割安な状態です。
PER | |
---|---|
アメリカ | 36.5倍 |
先進国 | 31.3倍 |
新興国 | 18.4倍 |
※2021年11月時点
今後、テーパリングの影響で先進国の株価上昇は一服するか、調整局面(下落)を迎える可能性があります。一方、新興国は中長期的に高度な経済成長が予測されているにもかかわらず、株価はまだ低迷していて、PER的には全く過熱感はありません。
もちろん、新興国株には政情不安や為替の変動リスクがあり、ボラティリティ(価額の変動幅)が大きいため、全幅の期待と信頼を寄せられる対象ではありません。また、すぐに結果を出せるカテゴリーでもありません。しかし、ポートフォリオの一部に組み入れておけば、中長期的には充分楽しみな存在になると言えるでしょう。
どの国が急成長してもカバーできる
新興国株インデックスファンドの国別構成比率は、その時の時価総額に応じて変化していきますので、新興国カテゴリーに含まれる国なら、どの国が急成長しても、その時点で最も適切な資産配分割合に調整されます。「どの国が最も成長するか?」という難しい予想をする必要がありません。
2050年のGDP(国内総生産)は、世界のTOP10に新興国の中国、インド、インドネシア、ブラジル、ロシア、メキシコの6カ国がランクインし、日本は現在の4位から8位に転落。TOP7に入る先進国はアメリカだけになり、新興国が上位を席巻すると予測されています。これを見ると、新興国の成長力が凄まじいことが分かりますね。
主要国のGDP予測 ※単位:10億米ドル
国名 | 2016年 | 2030年 | 2050年 |
---|---|---|---|
中国 | 21269 | 38008 | 58499 |
インド | 8721 | 19511 | 44128 |
アメリカ | 18562 | 23475 | 34102 |
インドネシア | 3028 | 5424 | 10502 |
ブラジル | 3135 | 4439 | 7540 |
ロシア | 3745 | 4736 | 7131 |
メキシコ | 2307 | 3661 | 6863 |
日本 | 4932 | 5606 | 6779 |
ドイツ | 3979 | 4707 | 6138 |
イギリス | 2788 | 3638 | 5369 |
フランス | 2737 | 3377 | 4705 |
イタリア | 2221 | 2541 | 3115 |
出典:PwCが発表した調査レポート「The World in 2050」
ただし、これはあくまで予測ですので、予測が外れる可能性もあります。また国の順位も予測に過ぎませんので、実際にどの国が最も成長するかは分かりません。
成長する国を1国予想して、集中投資するのは難しいですが、新興国株インデックスファンドなら、どの国が成長してもOK。いずれかの国が急成長すれば、その分のリターンも享受することができます。
デメリット
- 値動きが荒い
- 為替リスクが高い
- 運用コストが高い
- まだしばらく株価低迷が続く可能性がある
値動きが荒い
新興国株は、先進国株よりボラティリティ(価額の変動幅)が大きいため、値動きが荒くなりがちで、リスクが高くなります。良い方に転べば大きなリターンを獲得できますが、悪い方に転べば大きなマイナスになってしまう可能性があるということです。
下記は、約20年(2003年4月~2022年1月)のアメリカと新興国の株価の推移を比較したグラフです。
※アメリカはS&P500、新興国はMSCIエマージングインデックスに連動するETFの騰落率。
2003年~2007年にかけて、株価が約5倍に急騰した後、2008年に起きたリーマンショック前の最高値から、2009年の最安値まで、なんと約60%も下落してから、また約2.4倍に急騰しています。まるで絶叫コースターですね(笑)。
続いて、リスクを数値化した指標「標準偏差」を見てみましょう。これは、平均リターンから、どれぐらい上下する可能性があるかを数値化した指標です。
標準偏差比較(年率平均)
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 20年 | 30年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
先進国 | 11.2% | 19.9% | 16.8% | 17.0% | 19.0% | 18.2% |
新興国 | 13.2% | 19.1% | 16.8% | 17.7% | 22.7% | 24.0% |
※2021年11月末時点
※先進国はMSCIコクサイ、新興国はMSCIエマージングインデックスの標準偏差。
例えば、年率平均リターンが10%で、標準偏差が20%の場合、簡単に言うと、うまくいけば10+20=30%のリターンが得られますが、うまく行かなかったら10ー20=ー10%のマイナスになる可能性があります。
先進国と比べると、3年、5年、10年はあまり差がありませんが、1年と20年以上は新興国の標準偏差の方がかなり大きいことが分かります。
新興国は先進国と違って、国家が未成熟で政情が不安定な部分があり、例えばコロナ対策の遅れなど、経済状況や景気動向以外の要因によって経済成長が阻害される可能性もあります。
新興国株のインデックスファンドだけに集中投資するのはリスクが高いので、米国株や先進国株などと組み合わせるか、全世界株の一部として新興国株を保有する等、分散投資してリスクを抑えるようにしてください。
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為替リスクが高い
新興国は先進国に比べて市場の取引量が小さいため、為替レートが不安定で、まとまった資金が出入りした場合、大きな変動が起こる可能性があります。
また、新興国株は対象となる通貨が多いため、特に構成比率上位の国の為替レートが不利な方(円高)に大きく変動してしまうと、仮に株価が上昇しても、上昇が為替変動によって帳消しになってしまう可能性もあります。
例えば、中国元で説明すると、1元=20円の時に購入した銘柄があるとして、仮に20%円高または円安になったら下記になります。
為替レート | 損益 | |
---|---|---|
円安・元高になったら | 1元=24円ー20円 | 20%儲かる |
円高・元安になったら | 1元=16円ー20円 | 20%損する |
株価が変動しなくても、為替の変動だけで損したり得することがあるのが為替レートの変動リスクです。
主要国通貨の過去10年の為替レート変動
中国
台湾
韓国
インド
ブラジル
南アフリカ
ロシア
タイ
構成比率 | 変動方向 | 変動幅 | |
---|---|---|---|
中国 | 37.9% | 円安 | 約50% |
台湾 | 13.8% | 円安 | 約60% |
韓国 | 13.3% | 円安 | 約40% |
インド | 9.7% | 変わらず | 0% |
ブラジル | 4.5% | 円高 | 約-55% |
南アフリカ | 3.8% | 円高 | 約-25% |
ロシア | 3.1% | 円高 | 約-40% |
タイ | 1.9% | 円安 | 約45% |
※円高に振れた場合の変動幅をーで表記。変動幅は概算。
※構成比率はeMAXIS Slim 新興国株式インデックス(2021年3月末時点)の割合
例えば、上記の構成比率、為替変動幅の場合、8国分の合計だけで考えると、為替変動による影響は+32%になり、全体としては円安方向に振れたため、仮に「株価が全く変動しなくても為替的には儲かった」ことになります。直近10年ではたまたまこうなりましたが、今後どうなるかは全く分かりませんし、場合によっては同じだけ損する可能性もあります。
ちなみに同じ10年間では、アメリカドルは約50%円安に振れていますので、新興国の通貨だから特に振れ幅が大きくなるというわけではありませんが、為替レートの変動幅が大きく、複数の国が絡んでくると、非常に複雑になるということです。
ただし、つみたてNISAは長期間にわたって分散投資するシステムですので、購入のタイミングが分散され、購入単価とともに為替レートも平均化されます。そのため、あまり過度に為替リスクを気にする必要はありません。
運用コストが高い
先進国株に比べて、新興国株のインデックスファンドは、運用コストが高いというデメリットがあります。日本国内や先進国の国や企業の情報は入手しやすいのですが、新興国の国や企業は情報が少なく、入手する手間がかかります。
先進国株や米国株のインデックスファンドなら、信託報酬が0.1%以下の物もありますが、新興国株インデックスファンドの信託報酬は全て0.18%以上です。
また、新興国株は先進国に比べて売買手数料や外貨建て資産の保管費用が高いので、信託報酬以外にかかる「隠れコスト」が高くなります。売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用(有価証券等を保管する海外の保管機関に支払われる費用)等の「隠れコスト」を入れた実質コストは、0.5~1%になるファンドが大半を占めています。
運用コストが高いと、中長期で資産運用をする上で、それなりに大きな負担になってきます。例えば、年4%の利回りで20年運用した場合、下記の金額が余計に引かれることになります。
20年間分の手数料総額の差額 | ||||
---|---|---|---|---|
月投資額 | 年投資額 | 差が0.05%の時 | 差が0.1%の時 | 差が0.2%の時 |
1万円 | 12万円 | 11,927円 | 23,854円 | 47,707円 |
2万円 | 24万円 | 23,854円 | 47,707円 | 95,415円 |
3万円 | 36万円 | 35,781円 | 71,561円 | 143,122円 |
利益が出ていてもいなくても、運用コストは必ず引かれてしまいますので、新興国株のインデックスファンドに投資する場合は、必ず隠れコストもチェックして、コストが高すぎるファンドには手を出さないようにしてください。
尚、2本だけですが、隠れコストを入れた実質コストが0.4%以下の低コストファンドもありますので、そういったファンドを選ぶのがおすすめです。詳しくはのちほどご紹介します。
まだしばらく株価低迷が続く可能性がある
下記は直近5年間の騰落率を比較したグラフです。新興国株がダントツの最下位で、直近の半年のリターンは、先進国株はプラスなのに、新興国株はマイナスに沈んでいます。
※2017年1月~2022年1月
※各資産クラスの指数に連動するETFで比較
こんな状態では、普通の人ならわざわざ新興国株に投資する気が失せますよね。「新興国株不要論」が出てくるのもうなづけます。
これまでは先進国の中央銀行による異次元の金融緩和策が実施されてきましたので、先進国の株価は大きく上昇してきました。しかし今後はテーパリングによって、金融緩和は終了し、金利は上昇。先進国の株価を企業価値以上に押し上げてきたブースターは無くなります。
そうなると、実質的な経済成長力や業績が重要になってきますので、新興国株が陽の目を見る時期が訪れるかもしれません。今後起きるであろう世界経済の変化、新興国の急成長を見据えれば、「安いうちに仕込んでおくのも有り」という考え方もできます。
「夜明け前が一番暗い」ということわざがあります。直近のリターンが悪いのは、「まだ上昇していない」とも言えますので、気長に待てるのであればチャンスかもしれません。
つみたてNISAの新興国株インデックスファンド比較
では、つみたてNISAで購入できる新興国株インデックスファンドを比較していきましょう。3年のリターンが高い順に並べてあります。
※3年の以上のリターン記録がないファンドは、1年のリターンが高い順です。
指数 | 信託 報酬 |
実質 コスト |
半年 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 純資産 (百万円) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
i-SMT 新興国株式 インデックス(ノーロード) |
MSCI | 0.36% | 0.563% | -5.87% | 10.70% | 9.08% | ―― | ―― | 138 |
eMAXIS Slim 新興国株式 インデックス |
MSCI | 0.19% | 0.37% | -6.01% | 10.43% | 9.02% | ―― | ―― | 74,755 |
SBI・新興国株式 インデックス・ファンド |
FTSE | 0.18% | 0.19% | -5.40% | 10.14% | 8.85% | ―― | ―― | 12,251 |
つみたて新興国株式 | MSCI | 0.37% | 0.551% | -6.10% | 10.22% | 8.82% | ―― | ―― | 13,740 |
ニッセイ新興国株式 インデックスファンド |
MSCI | 0.21% | 0.582% | -6.13% | 10.19% | 8.81% | ―― | ―― | 2,902 |
SMT 新興国株式 インデックス・オープン |
MSCI | 0.66% | 0.82% | -6.02% | 10.38% | 8.76% | 9.29% | 8.75% | 27,071 |
野村 インデックスF ・新興国株式 |
MSCI | 0.66% | 0.781% | -6.13% | 9.95% | 8.74% | 9.23% | 8.76% | 5,574 |
eMAXIS 新興国株式 インデックス |
MSCI | 0.66% | 0.841% | -6.22% | 9.95% | 8.56% | 9.17% | 8.64% | 33,829 |
三井住友・DC新興国株式 インデックスF |
MSCI | 0.37% | 0.744% | -6.70% | 9.31% | 8.25% | 8.52% | 7.85% | 4,296 |
Smart-i 新興国株式 インデックス |
MSCI | 0.37% | 0.66% | -6.23% | 9.95% | 8.21% | ―― | ―― | 2,526 |
たわらノーロード 新興国株式 |
MSCI | 0.37% | 1.129% | -6.22% | 9.74% | 7.82% | ―― | ―― | 12,125 |
iFree新興国株式 インデックス |
FTSE RAFI | 0.37% | 0.754% | -2.90% | 20.44% | 5.22% | 7.12% | ―― | 7,096 |
※2021年11月末時点。3年以上のリターンは年率平均。
銘柄の比較ポイント
ファンドを選ぶ際は、下記に注目してください。
- リターンの大きさ
- 実質コストの低さ
- 純資産額
リターンの大きさ
リターンは、ファンドの運用力が反映された数字です。リターンが大きいほど、「運用の質が高い、優れたファンド」ということになります。短期的な数字はたまたまの可能性がありますので、できるだけ3年以上の長期間で比較するのがベターです。
新興国株のカテゴリー内では、それほどリターンに大きな差はありません。しかし、唯一「FTSE RAFI」をベンチマークにしている「iFree新興国株式インデックス」だけは、他と比べて異質な値動きをしていて、直近1年のリターンはダントツTOPなのに、3年では最下位という極めて荒い値動きになっています。
出口戦略を考えると、つみたてNISAでは値動きが荒すぎるファンドを保有するべきではありませんので、個人的には「iFree新興国株式インデックス」は候補から外した方が良いと思います。
実質コストの低さ
投資信託には、信託報酬の他に「隠れコスト」と呼ばれるコストが存在します。隠れコストとは「その他の費用」として運用報告書に記載されている売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用等のことで、1年間運用した結果、確定する費用ですので、目論見書には記載されていません。
実際の運用コストは信託報酬+隠れコストで、これが「実質コスト」になります。コストは、運用で利益が出ても出なくても、ずっと必ず引かれてしまう費用ですので、できるだけ安いに越したことはありません。リターンに大きな差があるなら多少コストが高くても構いませんが、リターンにほとんど差が無いなら「実質コスト」が低い銘柄を選ぶのが賢明です。
新興国株は、先進国に比べて売買手数料や外貨建て資産の保管費用が高いので、隠れコストが高いファンドが多く、注意が必要です。
表面上の「信託報酬」だけを見るのではなく、必ず隠れコストを含めた「実質コスト」を確認してください。1年以上運用されているファンドは全て「運用報告書」に実質コストが記載されています。
新興国株は特に、ファンドごとの実質コストの差が大きいカテゴリーです。最大で年1%も違いがあります。1%も違う場合、仮に月1万円ずつ20年投資したら、約18万円も手数料として余計に引かれてしまうことになりますので、できるだけ実質コストが安いファンドを選ぶのが賢明です。
純資産額
純資産額はファンドの規模が分かる指標です。基準価額×投資家が保有している口数で計算されます。例えば基準価額が1万円の時に、口数の合計が1,000口だったら、純資産額はおよそ1,000万円になります。
※正確に言うと、支払いが済んでいない信託報酬等の費用を差引いた金額が純資産額になります。
純資産総額があまりにも小さくなると、ファンドを運用している会社の経費が捻出できないため、「繰上償還」になる可能性があります。繰上償還とは、投資家の意志とは関係なく、ファンドの運用が終了してしまうことです。
償還時点の価額で計算された金額が戻ってきますが、長期的な運用をするつもりだった資産の運用を強制的に打ち切られてしまうことになります。そうなると予定が大きく狂うことになってしまいます。
ファンドを運用する金融機関側から見た、純資産額の損益分岐点は30億円と言われているため、必ず純資産額が30億円以上のファンドを選択してください。
3年のリターンがトップの「i-SMT 新興国株式インデックス(ノーロード)」は、残念ながら純資産額が30億円を大きく下回っていますので、おすすめはできません。
おすすめの新興国株インデックスファンド2選
指数 | 信託 報酬 |
実質 コスト |
半年 | 1年 | 3年 | 純資産 (百万円) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | MSCI | 0.19% | 0.37% | -6.01% | 10.43% | 9.02% | 74,755 |
SBI・新興国株式インデックス・ファンド | FTSE | 0.18% | 0.19% | -5.40% | 10.14% | 8.85% | 12,251 |
※2021年11月末時点。3年以上のリターンは年率平均。
リターン、コスト、純資産額を総合的に判断すると、おすすめはこの2本です。3年のリターンはどちらもTOP3に入っており、ほとんど変わりません。実質コストは新興国株のカテゴリー内で一番安いのがこの2本で、「SBI・新興国株式インデックス・ファンド」(愛称:雪だるま)の方が安いですね。
ちなみに、「雪だるま」は、「投資の神様」と呼ばれているウォーレン・バフェット氏の言葉「株式投資はスノーボール」に由来していて、雪玉が転がりながら徐々に大きくなっていく様子を表しているそうです。
2本の一番大きな違いはベンチマークにしている指数です。「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」のMSCIには韓国が含まれ、「SBI・新興国株式インデックス・ファンド」のFTSEには韓国が含まれません。
韓国を二重で保有するとバランスが崩れるので、韓国が含まれている先進国株と組み合わせたい方は「SBI」、韓国が含まれていない先進国株と組み合わせたい方は「eMAXIS Slim」を選ぶのが良いでしょう。
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まとめ
- メリット
- デメリット
1.20カ国以上に分散投資できる。
2.中長期的に大きな成長が期待できる。
3.直近10年の株価が低迷しており、伸びしろが大きい。
4.先進国に比べてPERが低くて割安。
5.どの国が急成長してもカバーできる。
1.値動きが荒い。
2.為替リスクが高い。
3.運用コストが高い。
4.まだしばらく株価低迷が続く可能性がある。
- リターンの大きさ
- 実質コストの低さ
- 純資産額が30億円以上あるか
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
- SBI・新興国株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)
いかがだったでしょうか?新興国株は大穴万馬券的な存在で、当たれば大きいですが、当たる保証はなく、いつ当たるかも分からないという難しい投資対象です。すぐに確実に利益を出したい方には向いていません。
直近10年は低迷が続いており、アメリカはもちろん、先進国、全世界株の全てよりリターンが悪い状況です。しかし、先進国に比べて、国家としても、経済的にもまだ未完成で未熟な分、伸びしろは大きく、もしかしたら急激に発展・成長するかもしれないという可能性は秘めています。
長期間かけて、成長を楽しみにしながらじっくりと待てる方には、「未来の可能性への期待枠」として、文字通り「投資」してみるのも良いと思います。ただし、当然リスクが高いため、全力で投資するのではなく、資金の一部・余裕資金を振り分けるようにしてください。
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